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「ビジネスのためのデザイン活⽤ラウンジ」レポート

2026年3月6日、札幌市産業振興センターにて(一財)さっぽろ産業振興財団主催によるイベント「ビジネスのためのデザイン活用ラウンジ」が開催されました。目的は、企業のデザイン活用から生まれる価値や効果を広く知ってもらおうというもの。
当日は企業・デザイナーなど 49 名が参加し、それぞれの声に耳を傾ける貴重な対話の場となりました。
北海道企業も選出、グッドデザイン賞の世界
第 1 部はセミナーから。グッドデザイン賞をはじめ多数のデザインプロモーションに関わる公益財団法人日本デザイン振興会常務理事の矢島進二氏が登壇しました。
1957 年に創設されたグッドデザイン賞 は国内認知率 80%以上を誇るデザインアワード。エントリー情報による一次審査、実物展示の二次審査を経て「グッドデザイン賞」および「グッドデザイン・ベスト 100」が選ばれ、さらにそこから「グッドデザイン大賞」他が決定します。
2025 年度グッドデザイン賞は 5,225 件を審査。グッドデザイン⼤賞 1 件とグッドデザイン⾦賞 19 件が発表された。
この日、矢島さんが紹介した 2025 年度グッドフォーカス賞の「THIS IS A SWEATER.」 は、山形県の老舗ニットメーカー米富繊維が「山形を代表するブランドを作りたい」という思いで挑んだ新ブランド。高い技術を持ちながらも表舞台に出ることがない OEM からの脱却をデザインの力で実現した事例です。
「グッドデザイン賞からみる、デザインで変わる企業の未来」をテーマに話す矢島進二氏
「グッドデザイン・ベスト 100」の中には北海道のサザエ食品株式会社 も選ばれています。株式会社エイトブランディングデザインによる「サザエ」のリブランディングが、「北海道の食文化を未来へと受け継ぐ持続可能なモデルを示した」と高く評価されました。
「このままではダメだ」⾃分たちが誇れる会社に
セミナーの 2 人目は、デザイン活用事例の企業側の声として北海道ポラコン株式会社代表取締役の中島康成氏が登場。昭和 48(1973)年に創業した同社は、透水性のあるポーラスコンクリートを専門とするメーカー。2019 年に現職に就任した中島氏は令和 2 年度のコンテンツ活用促進事業費補助金に申し込み、三善デザイン事務所とともに企業の CI および VIを一新しました。
「自分が U ターン入社した当時は続く経済低迷で経営は右肩下がりになり、社内も不安や不満が渦巻く暗黒期。このままではダメだと自社初の CI・VI を通して、自分たちが誇りを持てる会社に生まれ変わりました」
デザイン活用から5年を迎え、当初の目標数値を達成。社員の会社への帰属意識や満足度の向上により業務の質が高まった。画像提供:さっぽろ産業振興財団(以下財団)
これに手応えを感じた中島氏は続けてさっぽろ産業振興財団のマッチングプロジェクトに参加し、子会社の R-e 株式会社で販売する抗菌ソックスのリブランドを敢行。札幌大同印刷株式会社をブランドパートナーに新たな顧客開拓を目指します。
「⼤同さんのご提案で『ニッケルがはたらくそっくす』ランディングページ を作って大正解。月 100 万近くの売上になりました」と胸を張ります。


デザイナーが伴⾛する補助⾦活⽤事例を展⽰
この日、会場 1 階の Sapporo Business HUB では「デザイン活用促進補助金」や「クリエイター連携促進事業補助金」の採択事例を展示。商品のリブランディングや企業理念の可視化、CI/VI 開発等の様々な試みに、来場者は熱心に見入っていました。
各補助金の最新情報は当ホームページで随時発信中。
セミナー後、伊藤氏のガイドにより参加者一同も 1 階に移動。各展示の前で企業・デザイナーの解説に耳を傾けた。

丸友サービス(株)×札幌⼤同印刷(株)による「web ブランディング推進事業」。企業コンセプトを再構築し、⾃社ならではの家づくりサービスを発信。画像(下):財団提供

(株)北海道バイオインダストリー×(株)AMAYADORI の「デザイン経営導⼊による企業ブランディング再構築事業」ではブランドビジュアルを統⼀し、会社案内も刷新した。

(株)ノースフリート×シオリグラフィック(株)による「北海道産ペットフードを世界へ〜道産ビスケットのリブランディング〜」。商品価値を再構築し、競争力を強化した。

(株)白石ゴム製作所×(株)メディアプロが取り組んだ「創業 50 周年目の CI の再設計およびバリュー・ステートメントの策定による企業リブランディングの実施事業」。価値を生み続ける企業を目指す。

北海道ダイニングキッチン(株)×(株)ズックは「北海道ポタージュメーカーのブランド認知拡⼤事業」を実現。2 年かけて「uchiPOTA」ブランドを構築した。

石田製本(株)×小島歌織氏の「CRAFT ZINE サービス」。サービス開始から 3 年目。小ロットでも発注できるハードカバーZINE で売上は 3 倍に成長した。
企業とデザイナーがビジネスパートナーに
イベント後半のクロストークは、一般社団法人北海道デザイン協議会会長の伊藤千織さんが進行役。セミナーゲストの 2 人の前にも引き続きマイクが置かれます。
皆の関心が集中したのは、やはり北海道ポラコンのデザイン活用事例の詳細について。
「企業理念を考えるにあたり、きっと社内にリソースがあるはずだと思い、社内アンケートを実施しました。そこから生まれたスローガンが“多様性と挑戦”です。自分たちが目指す方向性を言語化したことで社内に一体感と誇りが生まれ、インドネシアから来ている技能実習生たちも自国の仲間に“この会社で一緒に働こう”と呼びかけてくれるようになりました」
「そうした変化の真ん中にデザインがあると実感しています」と語る中島氏。
進行の伊藤さんが「自社に課題があることはわかっていても実際にデザイナーに頼むという、ゼロからイチに持っていくところが難しそうですが」と話題をふると、「確かにそこでためらう中小企業は多いと思います」と中島氏。
「企業の本音としては少しでも発注費を抑えたいと考えがちですが、デザイナーさんが入ることで生み出される成果は想像以上に大きい」と語ります。
(株)ノースフリートとシオリグラフィック(株)のように、先に北海道産野菜茶のブランディングで信頼関係を築き、そこからペットフードのリブランディングという新たなプロジェクトへと規模が拡大した例もあります。
全てを一足飛びに変えなくてもいい、スモールスタートの取り組みも企業側のハードルを下げてくれそうです。
「ノースフリートさんと⼀緒にブランドを育てている最中です」と話すシオリグラフィック代表の足立詩織さん。
全国各地のデザイン活用例を見てきた矢島氏は、札幌の印象を「クリテイティブの感度が高く、ハードからコンテンツまで幅広いフィールドで、ローカリティを出しながら独自性を打ち出せる稀有な都市。クリエティブに関する補助金もとても充実しています」と評価する一方で、「補助金はあくまでもきっかけづくりに。真のゴールは、企業とデザイナーが数字の深いところまで話し合えるビジネスパートナーになれたらいいですね」と呼びかけます。
そうなるにはデザイナーも腰を据えてビジネスを勉強する必要があり、中島⽒も「ブランドは出来たら終わりではなく、育てる必要がある。どの媒体にどう打ち出していったらいいのか、そうしたところまでデザイナーさんに相談させてもらいたい」と企業側の期待を代弁していました。
財団では企業とデザイナーたちの共創をサポート。様々な事業を提供している。
クロストーク後は場所を 1 階の HUB に移して交流会がスタート。
「企業とデザイナーが⼀緒にブランドを育てていくなど共感できる話が多かった。自分たちがやっていることが合っていると思えて嬉しかった」(企業)、「パッケージ等の単発の仕事で終わるのではなく、その先も企業と長く関わりを持てることを知った」(インハウスデザイナー)など様々な意見が飛び交いました。

矢島氏、伊藤氏たちを囲む輪が次々と入れ替わり、互いの近況交換で賑わった。
今回のイベントは「セミナー・展示・交流」の三要素で構成。クロストークでは伊藤氏の的確な進行によって会場からも質問の手が上がり、補助金事例展示では企業・デザイナーの活動がわかるパンフレット等が閲覧できるなど、次のデザイン活用へとつながるきざしを随所に感じる会となりました。
文:佐藤優子 https://www.facebook.com/yukosato.mimibana
撮影:溝口明日花(マカロニ https://macaroni-photo.com/)
デザイナーと出会いたい企業の方、デザイン活用に関心のある方へ
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新たなビジネスやコラボレーションのヒントが見つかる2日間です。次につながる出会いの場として、ぜひご活用ください。